疑問:制気口のVHSで不燃仕様とはどういったものですか?
制気口(レジスター)の「VHS」における不燃仕様について、実務的な観点から分かりやすく解説します。
アシスト:そもそも「VHS」とは?
VHSとは、制気口の羽根とシャッターの構成を表す略称です。
- V(Vertical):手前側の羽根が「縦方向(垂直)」に可動
- H(Horizontal):奥側の羽根が「横方向(水平)」に可動
- S(Shutter):風量調整用の「シャッター(ダンパー)」付き
縦横の羽根で風向を自由に変えられ、後ろのシャッターで風量調節ができる、空調・換気設備で最もポピュラーな制気口(レジスター)の一つです。
「不燃仕様」とはどのようなものか?
一般的なVHSは本体や羽根にアルミ(またはスチール)を使用していますが、風量調整シャッターの駆動ギヤや、羽根の軸受け(ブッシュ)などの細かい部品に「プラスチック(樹脂)」が使われています。
「不燃仕様」とは、火災時の延焼防止や耐熱性を確保するため、これらの可燃性樹脂パーツをすべて排除し、金属などの不燃材料に置き換えた仕様のことです。
一般仕様と不燃仕様の具体的な違い
- 駆動ギヤ・リンク部:
- 一般仕様:ポリアセタール(POM)などの樹脂製ギヤ
- 不燃仕様:真鍮(黄銅)、ステンレス、スチールなどの金属製ギヤ
- 軸受け(ブッシュ):
- 一般仕様:樹脂製ブッシュ
- 不燃仕様:金属製ブッシュ、または軸穴直接支持
- 気密材・パッキン:
- 一般仕様:ウレタンやエラストマーなどの樹脂スポンジ
- 不燃仕様:不燃フェルト、シリコンゴム(耐熱)、またはパッキン無し仕様
なぜ「不燃仕様」が必要なのか?(主な用途)
主に以下の場所や用途で、建築基準法や消防法、管公庁の仕様書(公共建築工事標準仕様書など)に基づき採用されます。
- 排煙設備の吸込口(排煙口)として使用する場合 火災時の高温(約280℃)の煙を吸い込むため、樹脂部品があると溶けてシャッターが動かなくなったり、有毒ガスが発生したりします。そのため、排煙用は必ず「不燃仕様(金属製)」にする必要があります。
- 防火区画を貫通するダクトの直近 火災の熱がダクトを通じて隣の区画に広がるのを防ぐため、末端の制気口にも不燃性能が求められます。
- 内装制限(天井・壁の不燃化)がかかる諸室 避難階段、通路、地階、無窓居室など、内装を不燃材料で仕上げなければならない場所では、制気口も不燃仕様を指定されることがあります。
設計・施工実務における注意点
- 「排煙用(高耐熱)」か「一般不燃」かの確認 単に「不燃材料で作られていること」を求められているのか、「排煙口として280℃・30分(または1時間)の作動保証があるもの」を求められているのかで、メーカーの選定型番が変わります。排煙用の場合は必ず「排煙用レジスター」として認定・表記されているものを選定してください。
- コストと納期 不燃仕様(オール金属製)は、一般仕様に比べて部品加工の手間がかかるため、定価がアップし、納期も受注生産(約2〜3週間)になることがほとんどです。発注タイミングに注意してください。
- 操作感の違い 金属ギヤを使用しているため、一般の樹脂ギヤ仕様に比べてシャッターを開閉する際の操作感(ツマミの回し心地)が少し固く感じられることがあります(実務上問題はありません)。
